【講座】同人小説の作り方【第三回: 文字だけでも雰囲気は作ることが出来る】

第三回
文字だけでも雰囲気は作ることができる

お久しぶりです。前回の講座からかなり時間が空いてしまい、楽しみにしてくれた方には申し訳ありません。それでは三回目です。

今回は書体についてです。最近は絶対フォント感なんかという言葉が出てくるくらいフォントが身近になってうれしい限り。自分が学生の頃はあまりそういう話とか、同人界隈でもあまり出てこなかったように思います(女性向けはわかりませんが……)。でも最近は文章系同人でも、書体や、文字組、装丁の認識が以前より上がっているのは確かです。

アメリカなんかでは、ブックページ・インテリアなんて言葉があるくらいページデザインが発展している感じで本文をデザインするインテリア・デザイナーなんてのもいて羨ましい。ここでも、機会があれば一度ページデザインの講座をやってみたいと思います。

では本題へ。まず文字物の同人誌を作る場合三つの書体を用意してください。
  1. 見出し用の太いフォント
  2. 本文用のフォント
  3. 欧文フォント
これだけあれば十分です。見出しと本文は同じフォントファミリーを使うか、まったくデザインの似ていない別書体を使うかどっちかにしてください。

■書体を選ぶことについて
書体は思っている以上に可読性を左右します。そして、意外と意識されないのが書体から醸し出される雰囲気なんです。まずは下の画像を見てください(クリックで大きくなります)。
同じテキストで種類は違えど明朝体。ポイントも行間おんなじですが、文字から来る印象はかなり違うと思います。片方はオールドスタイル、片方はモダンな明朝体。人によって個人差、好みはあると思いますが読みやすさも違いがあると思います。

どちらかというと画像の左側の方が読みやすいと感じられると思います。左側は縦組みに向いたすらりと細長い書体、かな文字が筆っぽさもあって柔らかく繊細な印象を受けます。

右は横組みに向いた扁平な書体です。右側の書体はフトコロ(空間)が広く取られているせいで人によっては圧迫感やインパクトが強く感じるでしょう。実際行間を広く取らないと読みづらいです。

これだけ見てもわかるように、文字選びは慎重に選ばないと印象が大きく変わってしまいます。一般書籍ではリュウミンが多く使われています。それ以外にも小説を書きたいという人はまずはオールドスタイルの明朝体を中心に探していくといいのではないでしょうか?

ホラーなら擦れや墨溜りのあるクラシックな書体、恋愛小説ならウェイトの細い書体、派手なアクションがあるなら、カクカクした感じの書体みたいに、その物語がどういう雰囲気なのか、どう読んでほしいのかを考えると自然としっくりくると思います。

それでもダメなら書体見本。自分で世の中にはどんな書体があってどうやったら手に入るのかを調べるのも大切です。

■行間には気を付けろ
同人小説をいろいろと買っていると、時々見かけるんですがフォントサイズを7,8ポイントくらいにしちゃって。行間もギリギリでページにギチギチに詰めちゃう人。読みづらいです。いくら情熱を詰め込んでも、印刷費がもったいないからって、これじゃあ読めたもんじゃない。中には行間がほぼゼロみたいなのがあって、いくらルビ降らなくてもこれは無いだろってのも時々あったりします。

商業の文庫本でも今は8.5-9.5ポイントくらいの間になっています。そして何よりも、可読性を左右するのは行間だったりします。まして版型が大きくなれば商業ならB6や四六判でも9ポイントぐらい、A5くらいなら10-12でも問題ないくらいです。

一般的に読みやすいと言われる行間は50-75%の間と言われています。テキストの内容にもよりますが、複雑で難しめのものは広めに行間を取ると理解しやすくなり、逆に読みやすくライトなものほど、行間を狭めたほうが引き締まった印象になるんじゃないでしょうか。

サンプルとして自分で行間を調整した画像を作りましたが、みなさんはどれがお好みでしょう。一応最低限読めるようには調整しましたけども意外と行間って、読みやすさに差が出るのに気にされないところなんですけどね。

文庫本は行間50%ぐらいが多いので、画像の真ん中の文字組が読みやすい人も多いと思います。自分なんかは最近文庫本をよむと疲れてきてしまうので、行間は広めの方が好みです(広すぎるとマヌケですけど)。

行間は狭くても読みやすそうに見えるのですが、どんなに健康な人間でも、読んでいるうちに疲労が起こりますから、気持ち広めに作った方が後々疲れないです。

■見出しと本文
最初に三つの書体を用意しろと言いました。それは、使用用途がそれぞれに違うからです。

  • 見出しは目を引き付ける為、太い書体。
  • 本文は長く読んでも疲れない細めな書体。
  • 欧文書体は、アルファベットを綺麗に見せるため。

以上の目的で三つが必要になってきます。それ以上になると、版面がうるさくなるのであくまでも三つに絞りましょう(特殊な場面を描きたい場合はこの通りでなくてもよい)。もしちょっとしたアクセントが欲しいならあと一書体足してもいいと思います。

また、文章内での連続性を重視するなら、見出しと本文のフォントを同じにしてもかまいませんが、画面や、場面のメリハリをつけるなら、違いをくっきりさせた方がいいと考えます。

見出しと本文の例を画像にしたので、確認してみてください。書いてある例文はそのまま説明になっております。

それと、見出し3.はダメな例なので、意図してあえて外したデザインをする場合以外はやらない方が賢明です。
それ以外にも見出しの扱い方はブックデザインを大きく左右しますから。テキスト主体なのか、デザイン主体なのかで、ちょっと変わってきます。今回はテキスト主体として考えていますので、見出し1. 見出し2.のように考えていただければいいかなと思います。

■欧文書体と和文書体
デザイン性の高い同人誌作っているなと思う人でも、やってしまうのが和文付属の欧文書体を使ってしまう事。何が悪いのかわからない? 制作者の意図が違うんですよ。あくまでも和文付属の書体は和文と合わせるためであって、欧文書体の文字デザインルールから外れていることが多いんですよ。詳しくは下の画像をご覧ください。

欧文書体については以下の本を参考にするといいですよ、基礎知識をつけるならマジおすすめ。



文字を選ぶだけで、グッとデザインは引き締まります。同人なんだし自己満足でいいじゃないですか。できる範囲の知識、予算、ツールで最大限のものを出力する。たとえ、粗削りでもつたなくても自分で満足できればいいじゃないですか。

人を楽しませることも大切だけど、自分の気持ちを盛り上げないと、人に楽しさを伝える前に情熱が醒めていってしまいます。自分のやりたいことを忘れない事。これが創作の第一歩。

次回はまたいつになるかわかりませんけど、入稿用のデータ原稿の作り方をやりたいですね。それではまた次回。