辞書についての話

世の中には、辞書を字引として使う人ではなく、読み物として楽しむ人がいる。

私もその一人だったりする。基本は電子辞書で、必要に駆られた時に言葉を引くだけなのだが、(学習時は電子辞書の方が効率が圧倒的によい)ただ何となく紙の辞書をパラパラめくるのも楽しいのだ。

日本人は辞書を味わうことが、他の国に比べて出来やすいと思う。漢字があり、假名がある。漢字の意味を噛み砕くときは和語表現の言い換えをしたり、漢字の使い方の違いとかを知ったり、類義語を味わうのも楽しい。他の国に比べて一般語彙と専門用語などの高級語彙の垣根が低いのもあるだろう。

和英・英和辞典も案外読むとオツなものだ、意外と知らなかった語彙が増えたり、どうでもいい言葉を覚えるのにもってこい。中高で基礎固めされてる分、たとえ自分のように高校のグラマーのテストで赤点叩き出した人間でも読める。(英語に関して言うと個人的に英文読むことは嫌いじゃないが、文法構造を独特の専門用語で理解するのが苦手。一つの例文をねちねちと、あれはこういう構造で……って訳すアレ、あんなもんやるなら、例文の二〇、三〇大量導入して大量のパターン認識させてくれって感じでした。おかげ高校の時はでリーディングと英会話は成績いいのにグラマーがメタメタでした)

他にもベトナム語とか、漢字文化圏の辞書とかも読んでて面白い。漢字由来の語彙とか見てると、なんとなく意味が理解出来たり、使い方の違いを比較したりとかで時間を潰せるのだ。

ベトナム語のアルファベット文字の事をクオック・グー文字というのだが、ベトナム語で書くとCh Quc Ng 今は使われていない漢字派生の文字チュノム(Ch Nôm/*〓喃 〓は【宁字】[宁 偏に 字])と漢字を混用して書くと『〓國語』となり、言い換えれば国語文字という意味になる。

それ以外にも漢字文化圏であるベトナム語の語彙には漢字由来の語彙が六割ほどある。

chú ý(チューイー)QUÁKHU(クァクー)Thiết kế(ティエッ ケー)など、良く聞いてみれば何となく意味がつかめる語彙も多い。先ほどの言葉はそれぞれ『注意』、『過去』、『設計』である。意外とそういうのが解ってくると、東アジアの言語が急激に面白くなってくる。

辞書というのは暇なときに読むと結構楽しめるのだ。

ただマイナー言語の辞書に限って言えば、単語帳を辞書と言い張って出版されるものもある。これだけは気を付けたい。そのくせ高い。まあ、無いよりマシだし辞書を作るのは何十年もかかる長大なプロジェクトだから仕方がないんだけど、なんだかなってかんじではある。

辞書を買う際気を付けるべきなのは、収録語彙の多さ、用法・用例の豊富さ、文法事項の解説、ことわざなんかが収録されているかなどを確かめた方がいい。それだけで結構違う。

読み物としてなら、くたびれた古い辞書も案外オツなものである。英和辞典の解説文なんかだとポップコーンがパプコンという表記だったり、カタカナ表記がまさ確定してなくて表記の揺れが存在したり。

ワッフルの解説が、「小麦粉の生地を型に流し込んで焼いたせんべい」とかになっていて、間違いではないけど今と比べた時の言語感覚の違いが面白かったりするのだ。

読み物としての辞書は、紙が一番だ、電子辞書は言葉を知らないと引けないし、パラパラと流し読みが出来ない。日本語が書いてない辞書でも、本ならページをパラパラ開いて楽しめる。

意外と辞書は読み物として楽しめる。なお高い辞書になればなるほどどんなジャンルであれマニアックさが上がっていき、何とも言えない味わいが出てくる。何もすることが無くて暇なときに読む辞書はかなり楽しかったりする。ぜひ一度お試しあれ。