僕はたいした理由もなく君の手を握る 第十七章
翌朝、キッチンにあったティーバッグを使い紅茶を入れた。
こう毎日寒いと寒さだけしかこの世に存在しないように思えてくる。暖かさというのは怠け者だ。しばらくするとレーニャが起きてきた。
「おはよう、気分はどう?」
「悪くは無いわね。よくもないけど」そういうレーニャはどこかピリピリしているように感じた。
「お茶飲む?」
「もらう」
「どうしたの、何か変だよ、眠れなかった?」
レーニャはしばらく口を開かなかった。
「ここを出ていく準備した方がいいかもね。荷造りできる?」
「ねえ、一体……」
足音。
「もしかして」
「嗅ぎ付かれたみたいね」
「マジカルステッキ準備」
私は頷いた
ドアの脇にレーニャはたった、静かに呪文を唱え始める。
歌うように。
綺麗で、素敵な声だった。
ドアが蹴破られた。
同時に呪文が唱え終る。
ドア付近の一帯が、一瞬で炎に包まれた。火だるまになった人影が、何体か見えた。レーニャはさらにその人影をマジカルステッキで殴り飛ばした。
「アリサ! お願い」
私は頷く。
床に茶をこぼした時の水分を使い、マジカルステッキで呪文を描いた。
地面が揺れ、衝撃が巻き起こる。
そして、二人で周囲の人影をところ構わずマジカルステッキを使い力いっぱい殴った。
呪文と度殴打をを繰り返しているうちに、私たち二人以外誰も動く者はいなくなった。
息を整える。
レーニャは転がっている死体を調べ始めた。
「組合が私たちを追ってきたってわけじゃないみたいね」
「それじゃ協会?」
「どっちでもなさそう?」
「じゃあ何?」
「わからない、第三者みたいな感じ。ただ私たちのような人間を狙っているのは確かなようね。それかだれか裏で、操っているのか……どちらにしても嗅ぎ付かれちゃったんだから、ここはもう駄目ね。逃げる準備すぐできる」
「ちょっとまってて」