才能があって……なんて言うけれど。

「才能があってうらやましい」ちょっと前にそんなことを言われた。本心なのかお世辞なのかわからないが、悪い気はしないけど、世の中にはもっときらびやかで惚れ惚れする才能がいっぱい溢れているのに……。なんて思ってしまう。大金を稼いだわけでも、人からうらやましがられる栄光を手に入れたわけでもない。羨ましがられることをした覚えなんかないんだけど。

なんか、そういう言葉を信用することが出来なくなったというか醒めてしまった。何かしらをやっている人はわかると思うが、背中を押される言葉の数倍は冷たい言葉や、否定混じりの言葉をかけられ続けてる方が多いからだ。逆に肯定的な言葉をかけられると、逆にあれ、なんでこの人はこんなこと言うのだろう? というきっかけから、昔のことを思い出すきっかけになることが多い。

作ったものに対する具体的な感想とかプロセスを含めた評価とか、熱い気持ちなら褒められている実感が湧くのだけど、前述した言葉はなんか違うのだ。何というか、自分を憂いているとか何かを諦めてしまったというようなタイプの物悲しさを嫌というほど感じてしまうというか、想像できてしまって苦しい。

なんやかんや、みんな努力をして苦しんでいる。自分も昔、自分の上をいっている友人に、アイツばっか運がよくて良いよな……と指をくわえながら、嫉妬の炎を燃やしたりしたんだけど、それでも段々と見えない所で苦労してたり、それ相応の努力をしているってわかってくるから、余計に情けない気持ちを増幅させてさらに苦しむ悪循環だったりして、ね。

まあ、ごく稀に有り得ないようなトントン拍子ってのもあるんだけどさ。大半はみんなコツコツと積み上げてる。まあ、運が向いたり、そういった環境にいる事自体が恵まれているとも言えるけれどね。才能や能力があってもチャンスが巡ってこなくて潰れることもあるわけだし。それを言ったらケースバイケースでキリがない。

だから、俺はそう言った言葉をかけられると、きっとこいつは俺を褒め殺しに来ているに違いない。と斜に構えた見方をしてしまう。素直に受け取れないし、こんな言葉をかけられるうちは自分はまだまだだなと思っている。

俺も、言葉を素直に受け取れなくなった可哀想な奴の一人です。