【同人物書きのつれづれ語り】浮遊期間の話

同人サークルにおいては、浮遊期間というものがある気がする。浮遊期間というのは読んで字のごとく、イベントに初参加して間もない、自分の居ついたジャンルに無害に本をだしつつ、誰にも相手にされないような売れない本をつくってはイベントに出ることを繰り返し、本のタイトルを増やしていく時期の事。

しばらくすると、本づくりにもイベントにも慣れ一人、二人に手を取ってもらえるようになって、しばらくすると知らない人に声をかけられ仲良くなったりする。別の言い方を言えばサバイバル期間。

だから、最初のうちは、目立たないでいいので上手く漂う必要がある。ちゃんと〆切を決めて年に一冊でもいいから安定して自分の本を作れば、別に特別な事はしなくていいんだが、やる気のある奴、すごいものを作ろうとする奴は自分の身の丈に合わない行動をして墜落していくのだ。

自分が同人やってきて思う生き残るやつってのは、自分の出来る範囲の事を理解し無茶をしない奴。自分の出来る範囲で下手は下手なりに仕上げてくる奴。成長はゆっくりだけど気づいたら謎の存在感を醸し出していたりする。

パフォーマンスを上げるってのは負荷をかけることであって、だから始めて間もないパフォーマンスの悪い個体ってのは現状維持しつつ、見聞を広げて、自分の出来る範囲で作業をこなして基礎力をあげていくしか生き残る道はないんだよね。まずは、自分の出来る範囲で本を定期的に作れるサイクルを作る事。

悲しいことに仕事でも同じだけどね。でも仕事だと、ロクに基礎が出来ないうちから、現場に放り出されてて、上司のプレッシャーとか、出来ない奴はゴミ扱いで現場で色々パワハラまがいなことに遭遇しながら高付加をかけられながらサバイブしなきゃいけない辛さ。そのくせ、休日は少なく勉強する時間を作りたくても休みはないし、休みが取れても体がダウンして動けない現実……。

だから、下手にレベル差のある戦場に飛び込むのは自殺行為なわけで、同人でやる場合には仕事じゃないし上司のコントロールとかの影響なしに自分の考えで動けるんだから、自分で考えて、自分の出来る範囲で何かを作って、全部自分でやれるように出来るようにすることを最優先にしなくてどうするのって思う訳ですわ。

だから、自ら就職活動みたいに、自己アピールを盛ってアンソロに無理やり参加したり、スケジュール管理とチームプレイが必要なゲーム等の制作現場に初っ端から飛び込んだりすると痛い目を見ます。それで人間関係壊してしまった奴がどれだけいる事か。同人は形にできてナンボの世界。口先だけの意識高い野郎はおととい来やがれ。

オマケにその余波で、才能があるはずなのに才能もチャンスも一緒に自ら潰してしまったりするわけさ。最初からそこそこの振る舞いが出来る奴は、イベントデビュー前に下調べや、人に見せないだけでそれなりの量こなしていたり、小説だったら、ネットでSS書いていたり、大学の文芸部で揉まれてたり、「なろう」で量をこなしてたり、絵のジャンルだったらお絵かきチャットやら、Pixivなんかに投稿してたりするわけで基礎を齧っていることをお忘れなく。

同人は、売れる、売れないジャンルや運の良し悪し、状況と要素はあるけど、それ以外は完璧な実力主義だから。いくら高尚な思想や素晴らしいアイデアを持っていても、形にできない奴は論外。残酷にも思えますが、口だけ達者な奴、書かないでヘイトぶちまく野郎はちゃんと振り落されるので(そのかわり、性格最悪でもちゃんとやることやるやつや実力さえあれば生き残れますが……)、私はとても好きです。

とりあえず、同人を始めている人、これから始めようとする人はイベントを申し込む前に

『イベントに足を運んでイベントの空気に触れる』

『どんな本を作りたいか考え、どうやったら作れるかを調べる(売り方やアプローチも含)』

『とりあえず、短くても下手でもいいから完成する目途をつける』

こういう事を前もってやっておくといいです。書(描)きたくうずうずしているなら、少しでも原稿に手をつけておくこと。最初の頃は自分なりに余裕を持ったスケジュールを準備しても〆切に間に合わない事もありますし、トラブルもほぼ100%の確率で起りますので。

同人はちゃんと基礎を勉強すれば、誰でも本が出せる世界です。だから好きな事を、自分がしたい表現でする事。そうすれは精神的にも満足できますし、すごく楽しめます。運が良ければ、色々なチャンスが巡ってくるかもよ?