オーディオブックとオリジナル創作の二次利用のお話

小説なんかを書いている身として、いつかオーディオブックやってみたいって気持ちになることがある。オーディオブックっていうのは洋書を取り扱っている大きな書店なんかだと、洋書売り場の一角にオーディオブックコーナーってあるから、本読みの人は知っていると思いますが、CD換算で15~20枚組の小説の朗読メディアのことです。

 日本じゃ、過去にカセットブックという形で流行したことがあるらしいですが、それ以降定着はしなかったようで、新刊だろうが有名作品だろうが、一般エンタメレベルでも新作が出る欧米と比べるとお粗末というか、本当に川端康成とか、芥川龍之介とか本当に有名どころというか、教科書的な名作しかそろってないですね。おまけに視覚障碍者向けみたいなイメージがついている。

 ラノベとかアニメとかのメディアだと、ドラマCDやオーディオドラマという感じになりますね。そのまま原作のテキストを改変、縮約することなくって形はほぼゼロに近いです。 実際問題400ページ程度の長編だったらCD換算で平均10枚前後位になっちゃうんで、商売としては売り上げが見込めないだろうし、制作コストと採算分岐点を考えると色々大変なことにはなるだろうし、声優で売るとして日本じゃファンアイテムにしかならないのかもしれませんね。

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実際、数年前にも日経BP社がオーディオブック事業をやろうとしてコンテストをやっていたが、そのあと音沙汰が無いので頓挫したのだろう。創作同人でも、何度か色々なサークルがオーディオブックをやったりするのを見たが、長くは続かないようだった。

 でも、声優も沢山いるし、文章コンテンツも揃ってるんだから、もう少し広まってくれてもいいんじゃないかなと、思うんだけど難しいのだろう(欧米と違い、契約書の時点で出版社がオーディオブック化権を結んでないしね)。一般の人がオーディオブックを聞くようになれば、障碍者のある人でも、聞ける選択肢が増えるわけだし。日本語学習者が、日本語の音声資料として面白くネイティヴの発音を覚えられるようにもなると思うし、もっと身近になってもいいんじゃないかって思う。

 ただ、日本語の特性上、音声に比べ文字表記の情報量が多いっていうのがネックともいえる。漢字にカタカナ語や同義語のルビを振るいわゆる中二ルビの処理や、同音異義語、外国語や特殊な語彙の扱い。アクセントの置き方の処理をどうするかという問題もある。その対処をどう解決していくか。ってのはあるけど。それでも、個人的には魅力的なメディアだと思う。正直、自分だって疲れて気分的に一文字も見たくない日だってあるわけだし。それでも、小説は読みたかったりするわけさ。

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実際、私も大学生の頃(2006~10年頃)、オーディオブックを同人でやろうとして頓挫した経験を持つ。今と違ってニコ動はYOUTUBEの映像を乗っ取って運営していたような時代。まだ、同人経験も浅く、夢だけは人一倍もあった。周囲にも同人でゲームを作ったりして完成させた奴もいれば、エロゲライターになった奴もいる。留年して、卒業年度が一緒になった先輩はCG屋をやっていたりする。クリエイター的存在には恵まれていた。

 話を元に戻して、実際、オーディオブックを作ろうとなると。原稿はもとより、録音場所(宅録or貸しスタジオ)、声優への報酬・拘束時間(友人(素人)を使うにしても)そういった面でかなり大変なのだ。

 当時、とあるサークルで同人ゲームのシナリオをやっていた、友人(実際、ちゃんとハイクオリティな作品つくってコミケで売ってた)に制作時の修羅場やら色々な話を直接聞いたりして、色々情報は集めていた。ちょうどそのサークルは当時のニコ動の歌い手さんをスカウトして、声優に使っていた。

 同人とはいえ声入りはやはり資金の面で大変だったようだ。話を聞くに、外部から声優を呼ぶとなると、同人だからささやかな形ではあるが寸志という形で報酬を出さなければいけないみたいだし、何人も声優を使えば結局まとまった金が飛ぶ、慰労も兼ね打ち上げもしなければならない、さらには打ち上げの交通費も出さなければいけないらしかった。
 結局、私は同人誌は作ったもののオーディオブックをやるまでの予算と体力は無かったのであきらめた。

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最近になってまたそういったことをやってみたいと思うようになった。多分実現するとしたら、何年も先のことになるだろう。いつか実現させたい夢のようなものだ。

 というか、男性女性を問わずもし仮に声優さんとか声優を目指している方で、長文のテキストが必要なら、うちの同人小説でよければ朗読用のテキストとして提供することだってかまわないと思っている。将来的には、ガイドラインかなんか作って音声データのみならダウンロード販売を許可することだって考えるかもしれない。

 もちろん読む価値があるかはあっちが決める形で(こっちとしてもまだ、未熟なのが多いし、正直書き直したい作品はいっぱいあるしね)。世の中には、結局仕事が無くなって、キャリア形成しようにもできないってひとは沢山いるわけだし。
 
 せめて同人であれ、まとまった作品を朗読させるなりして、間を持たせたり、普通の仕事をしているけど声優の道はあきらめたつもりではないので同人声優みたいな形で活動するみたいなことだって、あっていいはずだ。

 個人的には一次創作で生み出された素材(マンガ、イラスト、小説、ゲームシナリオ、音楽etc...)の二次利用・二次的著作物制作(口述・朗読・演劇・他言語翻訳など)が可能なことを表明することができる一次創作同人ライブラリー(一次創作のタイトル、概要、権利保持者、契約内容など等の情報が記されてあって必要なら電子ファイルで本文ダウンロード出来たり、サークルのサイトのアドレスなどが登録してあって、誰でも年会費払えば利用できる) とか作って、そこのライブラリーを使えば、契約することだってできるようになれば面白いと思う。

 二次的著作物のWEB配信、販売するときには売り上げの分配についてなんかの、ドライでフラットで更に透明な契約が出来るようになればいいなと思ってる(同人の範疇を超える可能性はあるけれど……)。

 これは理想論ではあるけれど、こういったことが同人で時代がもしかしたらせまっているのかも。実際こうなってくれたらうれしい。