今、本屋で何が売れているのかわからない。

数日前、仕事帰りに久しぶりに本屋に寄った。
 同人誌の反省を兼ね実際に、今書店ではどんな感じの本が売れているのか、それらがどんな特徴があるのか? というのを調べたかった。
 結果わかったことと言えば。
 一般文芸は有名作家の話題の本か新刊しか置いてない。というか、俺があまり読まないので、さほどちゃんとチェックせず。[元々自分の読書傾向は偏っていて翻訳文芸(エンタメ・文学問わず)中心。日本人作家は村上春樹位しか読まん。]
 翻訳小説は新刊に魅力的なのがあまりない。在庫は既に読んだ有名作品ばっか。
 教養新書は棚を広くとっているが、その上位互換の専門書となると……。
 ラノベの表紙は、大半がキャラの立ち絵で白背景。相変わらずのラブコメ。息が長いな。おまけにタイトルが記憶に残らない。個性的な作品は出ているがターゲットが中高生向け。
 少女小説系はファンタジー
 WEB系出身のノベルス・四六版の棚やボカロ小説が増えているが、どんな層が買っているのだろう。単価は高い。でもどことなく賞味期限は短そうに思う。いわゆる一過性。文章をパラ見しても、読み物として頑丈ではなさそう。あまり書店のプッシュが感じられない。
 これはあくまでも俺の独断と偏見。
 高校、大学の頃は、飯代を削っては購入資金に変え、ほぼ毎日のように本屋に通っていたんだが、どうも最近は行っても、めぼしいものが見つからなく疎遠。

 古本屋もご無沙汰。(悲しいことに家の近くにも職場の近くにも無い)
 Kindleは通勤の時に使ってるし、カバンには、何かしら読むための本を入れているが、それを鑑みても、楽しいと思う本が見つからない。探せばあるのだろうが、そういう本は大型書店に行かないと見つからない。
 本当に、今の本屋って何が売れてんのかわからない。

 ちょっと懐古厨的な話になりますが……。俺の青春時代ゼロ年代前半から中盤にかけてのことを考えてしまった。


俺の高校時代は、ラノベなんかが盛り上がって物語に飢えることはまず無かったと思う。当時は高校生で元々の読書量が少なかったというのを抜きにして。特に当時のラノベ業界はごった煮で、色々なジャンルのものが手に入り(雑多なジャンルが売られるという事は業界的には迷走してたのかもしれんが)学生が多い本屋だと、電撃文庫のの発売日である毎月10日前後は、ラノベの棚がスカスカになるという面白い状況が見られた。
 一般文芸に対しても今ほど酷くはなかった気がする(セカチューとかウザかったけど)。翻訳ミステリ・SFの毎月の出版点数も今より多かったし、それ以外のものも面白かった。ネット情報だけじゃ十分な情報が手に入れられなくて、雑誌も必要だった。
 高一のころなんか『マルドゥック・スクランブル』やら『塩の街』やらがでて、ヒャッハーだったし、数年前にアニメ化された有名長期シリーズが始まったり。高二では『空の境界』とか『撲殺天使ドクロちゃん』とかなんかごっちゃごっちゃしてた。
 ちょっと遡れば『ブギーポップシリーズ』や『イリヤの空UFOの夏』とかあったし、これだけは最低でも読んどけ的なタイトルが結構あった気がする。それでも、めぼしい本が無けりゃ『エロゲ』を漁ればいいって感じで『AIR』『CLANNAD』etc...。同人じゃ『月姫』あたりとか楽しめたんだよな。
 
さらにいえば、ラノベ作家・エロゲライターが影響された文学やら、SFやら、小説やら何やらを読むという体系的に本を読むことが出来た感じがある。(これは今もできるだろうけど)
 本当にその頃はネット黎明期で、情報が個人から発信され、今思えば『物語に恵まれた時代』だった。エロゲライターが評価され始めたころだし。ムダに勢いだけはあったんだよね。
 そういう時って、そのエネルギーが周辺メディアにまで影響されるからネット論壇の走りみたいなのも増えていった気がする。
 これは2000年代に十代を過ごしたものの視点だから、私より年上の世代の印象は違うだろうし、下の世代の人たちも、自分とは見ているモノは違うだろうけど、主観的な感覚としてはこんな感じだ。


環境的に言えば、今の方が、古本でも何でもAmazonを使って色々な本が入手しやすい状況はそろってるんだけど、新刊本から出る、うっとうしいくらいの暑苦しさってのか全然感じない。雑誌、評論、一般書、文芸問わず。

 だからと言って、同人界隈にそういった熱い人――鬱屈したルサンチマンを抱えたクリエイターとか――がいるかといると微妙と言わざるをえない。
 
俺は言いたい。俺は今とてもわけの判らない『パッション』が欲しい。繰り返しの読書に耐える頑丈な本が読みたい(もちろん内容が)。