僕はたいした理由もなく君の手を握る 第二十二章
俺とコーディリアは指定された廃墟のビルに上り、魔法少女の集団が来るのを待ち構えていた。今までに何回も指令をこなしていったが、命の危険のあるというのは精神的に疲弊させられた。
今回の仕事は狙撃命令。数時間前に魔法少女たちの小隊がこの近くにやってくるという事が知らされた。俺たちは、それを狙撃して戦闘を引き起こす。つまり鏑矢の役割だ。
俺たちの仕事は、戦場に混乱を巻き起こす事だった。
あとは、別部隊の仕事だ。戦闘が始まった時点で俺たちは戦線離脱する。
「準備はいいか」
「うん」
「今回は呪符を使え、いいな。その方が確実だ」
狙撃準備を終えると、長い時間待機する。
気は抜けない。
待つのも仕事だが、長い時間の緊張は勘弁してほしい。
しばらく窓の先を見つめていると
「来た」とコーディリアが言った。
「よし、この先の十字路を過ぎた二番目の建物に来たら打て」二人の間に緊張が走る。俺も、コーディリアが外した時のために準備をする。
ターゲットが照準に入ったのを確認すると「打て!」と叫んだ。
コーディリアは準備してあった呪符をマジカルステッキで突いた。呪符が破け、魔法が発動し、細長い光の筋が飛び出した。
小隊の魔法少女が一人倒れる。
二発目
三発目
繰り返す。
「十分だ、これ以上は離れろ手対するぞ」
「うん」
その瞬間、微量な魔力を感じた。
「気づかれた、狙われてるぞ」
「カルナ!」突然コーディリアが叫び始めた。
急いで俺の方に飛び掛かって、俺を突き放した。
瞬間。
コーディリアの服の中から、花開いたかのような血の染みが浮き上がり、倒れた。
連続する破裂音。
そして、攻撃は止まった。
「コーディリア!」俺は叫ぶ。ふと、身体が今までとは違う感覚を覚えた。目の前に男の大きな手、自分の身体が元の姿に戻っている。
契約が破棄された。
血の気が引く。
「コーディリア?」倒れた少女に近づき、問いかけるも反応はない。何度も名前を繰り返し呼ぶが反応はなかった。
俺は何をするでも無く、動かなくなったコーディリアの手を握る。特別な意味はなく、ただ握っていた。
まだ、彼女のぬくもりは残っていた。