オタクとビデオの話

まだ2000年代前半はビデオデッキとビデオテープが現役だった。

その頃はアニオタに限っていえば、テレビとビデオデッキとビテオテープの山が必須アイテムだった気がする。自分としては中学生の時にオタクを自覚した。そして、毎日のように深夜アニメをその日やっているだけビデオに録画して、家に帰って一通り見て、つまらないものは早送りしながら、眺めて、その後学習塾に行くというスタイルだった。

もちろん使うビデオテープの量も凄かった。VHSも末期なので、中学生のお小遣いでもどうにかやり繰り出来る値段まで価格が落ちていたのと、100円ショップで中国製の得体の知れない120分のテープが買えたというのもある。

おかげで中高の六年間でビデオデッキ3つをオシャカにした。完全なアニメオタクだった。まあ、グッズに金をかけることも、原作を買う事も殆んどしなかったけど、多分オタクの範疇に入ったと思う。

多分当時のアニメオタクは、ビデオと切っても切れない関係だった。本当にアニメの録画は本当に重要だった。録画に失敗すると再放送はないし、ネットの公式配信なんかないから、本当に一発勝負みたいなものだった。

当時は、テレビやマスメディアが外界と繋がる手段だったんだなと今更思う。メジャーなテレビか雑誌に紹介されなきゃそれは存在しないも同然だったから。今思うとホント馬鹿げている。

でもいつのまにか、アニメを録画するという行為も急激にしなくなってしまった。興味が読書に傾いてきて、小説ばっかり読むようになったからだ。そして自分の興味は創作側へシフトしていく。

ビデオというものを完全に使わなくなったのは2005,6年くらいだったと思う。DVDの影響もかなりあった。さまざまな作品がDVDソフト化されてくるし、インターネットも出て来た。価格も下がってビデオに録画するという行為がだんだんバカらしくなってきたのだ。

ビデオに録画するはなくなったけど、家の中にはまだビデオテープが山ほど残っている。再生する気は起きないのだが、なんか捨てるのも勿体ない感じがして、処分が出来ないのだ。

昔気質のオタクというのはどこか、知識がアイデンティティな所があって、ビデオテープと蔵書の量というのが目に見えて定量化できる知識の証拠だった。オタク=知識。そんな公式が成り立っていた。今となってはそれは幻想でしかなかったのだが、ネットが無ければそんな事実にも気が点けなかったのだから、人間なんてそんなものだ。

いまだにビデオテープが現役の時代だったら、創作側に回らずに、自分は消費するだけのガチなアニオタをやっていた気がするし、もしかしたら今以上にフラストレーションをためて、やっぱり創作をするようになっていたかもしれないが。

未来がわからないのと同じで、歴史に『もし』はない。でも、もし今もビデオテープが現役だったら、自分の人生は変わっていた気がする。きっと何物にもなれな只のオタクでしかないような気がしてならない。

大したものじゃないんだけれど、ビデオデッキとテープややっぱりオタクにとって偉大なものだったんだと思う。