自分なりの小説同人誌の凝り方

同人誌を作りたい人でも、『本』そのものを作りたい人と、本や小説の『中身』を作りたい人に分かれる感じがします。実際はそんな極端ではなく見た目と中身のバランスが5:5だったり8:2とか3:7とかに分かれていると言った方が正しいですが。

自分は割と、本の装丁とか文字組みとかにこだわる方なんですが、マニアックな方向にこだわっちゃうので、あまり理解はされない感じです(笑)自分の作る本ではペーパーバックをパロディにした本づくりをしている感じです。本文用紙を軽くてザラついた用紙にしてみたり、デザインに洋書の表現を和書にどう組み込むかというのを毎回考えながら、微調整を繰り返す感じで完全に自己満足の世界ですが、でもこういうのがなくちゃ長く続けられない気もします。興味の幅は広い方が深みが増す様にも思えてくる。

多分これが、ハードカバーやら和綴じやら、別の製本方法だったらまだ別のマニアックな方向にぶっ飛ぶと思いますけど。いまは洋書パロディがベースです。

一体どんな感じで凝っているかを、例を挙げて説明してみますね。
ためしには、洋書のペーパーバックと自分の同人誌を並べてみます。この時点ではあまり真似をしているような印象はないと思います。

ページをめくると自分の小説には扉(タイトルページ)の前に前扉をつけています。和書だと前扉はつけないですが(和書だと例外的に創元推理文庫とかついてるけど)洋書は基本的に前扉がついています。

英国のペイパーバックでは、著者略歴をつけることが多く(参考:英Vintage Books)

米国ではあらすじと称賛の言葉が並ぶことが多い。(参考:米Berkley Books)

そして英米のハードカバーになるとカバー袖ににあらすじなどが配置されるので、タイトルだけ配置されることが多いです(前扉は本に表紙がなかった時代の名残だそうです)

自分は前扉にあらすじをつけています。

洋書の2ページ目には著作リストが入るので、それもそのまま輸入。そして扉(タイトルページ)この時点で雰囲気がでてきています。

そして、洋書でおなじみ扉裏の奥付ならぬ前付。ここに著作権表記やら出版履歴が洋書には書いてあります。そのかわり洋書には奥付はありません。この前付の起源は、「勝手に無断コピーしたら呪ってやる」的な呪いの言葉を扉裏に書いたことからと言われています。いつの時代も悪い輩がいたんでしょうね。

自分の場合は日英両表記。飽くまでもお遊びです(でも本気)。もちろん和書なので奥付もつけています。そして目次へ


目次の後には中扉。


そして次のページをめくると本文が始まります。もちろん日本語なので文字組は縦書きです。タイトル見出しを横書きにしたかったのと、本文の始まりは上段から始めると文章の始まりにドロップキャップ(先頭の文字を大きくするデザイン)をつける際に、上段を使うと妙に圧迫感が出てしまう気がするので、上段を潰し、本文は下段始まりにしています。

上の画像を見るだけでも洋書の本文デザインを意識しているのがわかると思います。


和書は縦組みなので読む際の影響が少ないせいか、章題や見出しのあるページにもヘッダーをつけますが洋書の場合章題や見出しのあるページはヘッダーをつけないので、そういう所もパクっています。

そんなことして意味あるの? とお思いの方もいるとは思いますが、言語が違えどどんなものにも、経験を元に何かしらの意味があって作っているので、それが元々の製本機械の制約なのか、それとも人間工学的な意味合いなのかを考えつつ。取捨選択して、自分のスタイルに組み込むことが大切だと私は考えます。

版面、書体までは縦書きと横書きの違いがあるので、マネは出来ませんが、その点は和書として、どうやったら読みやすくなるか行間調節と余白を考えつつ、前回作った同人誌で気になった点を調節する形で、毎回、ストーリと読むときに違和感を感じないようなフォントを選び、どうやったら読む人に負担をかけないで作っていくかはやっぱり大事だと思います。読者あっての同人誌ですし。

こういったところで凝るって、モチベーションが上がって楽しいんですよ。じぶんは洋書ベースに考えていますけど、自分の好きな小説や、好きな出版レーベルの本を自分なりの表現でアレンジしたり、真似したりするのってすごくいいと思うんですよ。実際に作ってみて、デザインの意味を納得したり、意図を理解したりする勉強にもなるんで、自分で一通りやってみるって大切なんじゃないでしょうか?

でも、こういうブックデザイン関係のお遊びって、マンガであれ小説であれ同人誌の醍醐味ですよね。商業じゃブックデザイナーさんにおまかせで、文字組だってその出版社の基本フォーマットが決まっているわけで、お遊びがしづらい気がするんですよね。予算もあるし、製本コストから人件費から何からあるわけだし。

お遊びなんだから自分の出来る範囲で本気でやらなきゃ勿体ない。私はこんな感じで楽しんでます。もちろん中身もちゃんと作りますよ。中身がちゃんとしないと設定が生きないですから。

という事でこんな感じで、自分は同人誌を素人なりにデザインしています。まあ、好き勝手やって自分で満足すればそれでいいんだよ。難しく考えず、したいようにやるのが一番。

おまけ
本の構成について。これを守って作るだけで、ちゃんとした本らしくなります。ここまでちゃんとしたページ構成はハードカバーの学術論文とかになりますが……。
■和書の構成
  1. 扉(タイトルページ)
  2. 口絵
  3. 献辞
  4. 序文(まえがき、はしがき)
  5. 凡例(図版目次を次に入れる場合もある)
  6. 目次
  7. 図版目次
  8. 中扉
  9. 本文
  10. 付録
  11. 索引または後書き
  12. 後書きまたは索引
  13. 奥付
(印刷事典 第五版ページネーションの項より引用)

※本の構成に不要な部分は省略される
■洋書の構成

図1:印刷事典 第五版より オックスフォードルールとオリバーシモン

図2:ペンギンブックスのデザインより ペンギン組版規則 書物の構成