しおり紐(スピン)の話

しおり紐って、あってもなくても読む側にはあまり変わらないかもしれないけど、装丁のワンポイントして使えば、雰囲気の出る本になる気がします。スーツのネクタイと一緒で、無くてもどうにかなるけど、上手くハマればすごい様になる感じと言ったらいいのでしょうか?

ということで今日はしおり紐の話。製本用語では何故か知らないけれどスピンと呼びます。英語の製本用語でSpine(スパイン)というのもあるけど、これは背表紙の事だから語源としては違う気もしなくはない。

みなさんがよく見るのは上の図のこんな奴だと思います。ただ、こいつの問題点は単純に長い状態で売られているしおり紐をカットして張るだけなので、どうしても切り口の部分が普通に使っているとほぐれちゃうんですよね。

長く使ってるとこんな風に。これが汚らしくって個人的にしおり紐って好きになれない。装丁としては魅力なんだけど、長期保存的な意味で向かない気がして嫌なんです。

個人的に、自分は新刊書籍などの封入物(チラシ、新刊案内や)やしおり紐は基本動かさず買った時のままの状態で読みます、これを自分は「デッドストックごっこ」と表現しています。古本以外で買った本は例外はあれど割と高確率でこんな感じです。

馬鹿げているとは分かってるんですが、いつか自分の手を離れた時、何かのきっかけで、他の人に渡った時良い状態にしておきたいのと、何かのきっかけで、自分の本棚が発掘された時に極上の保存状態で発見されて後世の人を驚かせたいとかいう謎の考え(多分、俺が死んだら蔵書なんて無慈悲に捨てられる運命だろうけど、こういう馬鹿げたロマンは人生のスパイスだと思う)により、やっているだけなんですが(笑)


さて、話を戻して、しおり紐についてなんですが、上の画像はとある辞書に使われていたしおり紐なんですが5mm幅くらいのリボンを使っていたんですよ。これはとても魅力的でした。普通に使っても先っぽがあまりほぐれない。これはいいなと思ったんです。これは実際に自分でも本作るときに使ってみたいと思わせる感じでした。

製本屋さんが普通のしおり紐を使うのは出版社さんのコスト削減や、安価で手に入りやすいというのもあると思うんですが、なんというか、しおりとしての質が今一つな感じがします。殆んどがハードカバーに使われるので、多少コストが上がってもほぐれにくい方がいいと思うんですけどね。

あと、このしおり紐も気に入っています。洋書で、しおり紐も日本のに奴にちょっと近い感じなんですけど、ただ、こいつは繊維が太目で目が細かく強度がある感じがいいです。日本のよりほぐれにくいんじゃないかな?

つけ方もめずらしく花ぎれ(ハードカバーにつける本文の上下に着けるヘッドバンド)の端についています(普通は中央につける)

また別の洋書(カクテル・レシピブック)のペーパーバックなのですが、これもしおり紐にリボンを使っています。ペーパーバックとか、ソフトカバーのしおり紐は日本でも海外でも珍しいです。

つけ方も斬新で、本文用紙の最後のページにホットメルトもしくは、製本用接着剤で無理やり本文用紙につけてあるという力技。普通背のホットメルトに挟み込むスタイルが主流なので、個人的にこれ初めて見た時、しおり紐のつけ方の固定観念覆されました。シンガポール製です。このやり方、同人誌とかに応用ききそうと思ってしまった。自分でしおり紐買って、出来そうな感じ。

やっぱり、しおり紐ってあるか、ないかそれだけで、本の雰囲気を変えちゃうものだと思います。

自分も十年以内にはしおり紐ついた同人誌作りたいなとは思うんだけど、気に入ったしおり紐が使えるか、もしくはこっちで用意したものを使えるのか準備と下調べも必要ですしね。でもリボンのしおり紐ってすごく魅力的だと思いません? ほぐれないって素敵。

装丁って、やり方によっては内容の雰囲気や世界観を伝えられる要素なんですよ。こういった小さなことでも、どうでもいい事と思うか思わないかで劇的に変わってしまうことがあるのが恐ろしいですよね。