黒板とホワイトボード

講師業という仕事柄チョークとホワイトボード・マーカーはよく使う。個人的にはチョークなら日本理化学工業のダストレスチョーク、ホワイトボード・マーカーなら Pilot ボードマスターを愛用している(インクのリフィルがあって大助かりです)。

自分の働いたことのある職場の一つは、古い進学予備校を居抜きで使っていたために、いまだに黒板とチョークを使っているし、また別の職場は、最初からホワイトボードが備え付けられていた。そんな感じで教室にどっちが設置されているかは場所によるとしか言いようがないのだけれど、どっちを使うにしても、道具のこだわりが出てくる。

毎日のように使うから、自分はチョーク昔ながらの軽くて粉が多いチョークは使えないし、炭酸カルシウム製のチョークがなければポケットマネーで買うレベルだ。ホワイトボードのマーカーもそこそこの太さでが書けないものは授業では使わない。

だが講師としては、チョークはダストレスとかの炭酸カルシウムで粒子の重いチョークを使っても、筆記量が多いと、どんなに気をつけてもシャレにならないくらい服と靴が汚れる。チョークの粉は拭いても落ちないし、水を含ませた布で拭くと粉が固着する。本当に最悪なのだ。

黒板消しで消しても粉が残るし、あの掃除機のバキュームを改造したようなクリーナをかけても、黒板消しは綺麗にならない。おまけに、エアコンのフィルターは目詰りするし、電気製品の寿命も短くなるのであまり嬉しくはない。授業ごとに手を洗う必要があるし、そういう点ではホワイトボードのほうが大助かりである。

でも、授業運営を考えるとチョークの方がありがたかったりする。チョークは書くときにリズムを作れて、授業のテンポを調整しやすい。そしてチョークは硬いので安定するしきれいな字が書ける。チョークの長さでだいたいの書ける文字の量が把握できるのもいい。講師業をやったことがない人にはわからないかもしれないが。チョークとマーカーでは授業のリズムが違ってしまうのだ。

マーカーは摩擦がなくて、サラサラとかけてしまう。そのため線の強弱もつけづらいし、太さも限度がある。おまけに気をつけないと摩擦が少ないので字が上手にかけない。どっちにしても一長一短がある。悲しいことに両方の美点をカバーする筆記具はまだ生まれていない。正直ブラックボードに、チョークみたいな硬さのペンで、文字の点画がはっきりつけられて、ホワイトボードのようにカスが少ない筆記具があったら最高なんだけど、そうはうまくはいかない。

公教育の場合、いまだに黒板が多いのは、コストだけでなく、生徒への視認性可読性のことを考えて、基本暗緑色もしくは濃紺の黒板に白いチョークで書く事が多いと思う。実際チョークのほうがバリアフリーだ小学校から大学まで基本は黒板だ。大教室であればあるほど、見やすさの黒板である必要性は高まってくる。チョークじゃないと文字の点画もはっきりしないし初等教育だけに限定して言えば黒板は必須だ。(いまだに大手の進学予備校が黒板なのも学生を第一優先にしているからだろう)

大人相手の教育産業なら近年はホワイトボードが優勢だと思う、理系だと、数学科を除いて(数学科はチョーク愛好家が多いらしい)大体の所はホワイトボードになってきていると思うし(機械や実験などをするならなおさら)、文系の教育産業でも美術関連を扱うところでなければやっぱりホワイトボードになるんじゃないだろうか?

ただ、考え事をしながらの時は、チョークがありがたい。仮に黒板とホワイトボードの部屋どちらかに引きこもっていいと言われたら黒板のある部屋に引きこもるとおもう。深い思索にはチョークと黒板のほうが合っていると思うのだ。ただ、現実的にはホワイトボートとマーカーは服が粉で汚れ無くて非常にありがたい。ああ、なんというジレンマだろう。