十年ひと昔

久しぶりに本の整理をした。とはいっても、部屋の床一面に本を置き過ぎているので、ほんの一部しか出来なかったのだが、とりあえず本を詰め込んだダンボール一箱分は処分した。

処分したのは2003-2005年くらいの雑誌類であるニュース雑誌やら高校時代に買ったファッション誌やらオタク雑誌やら、内容は千差万別。とは言えその年号を見ると十年も過ぎてしまったのか……と不思議な思いに駆られる。

2000年代の前半は、オタクに今のような市民権もメジャー感もなく、一般から迫害されていたという現実が、当時のオタク雑誌の文面を見てもひしひしと感じられた。ただ、エッジの聞いた作品がメインストリームに進行する兆しが見え始め、世間のパワーバランスが現在に近くなる予兆のようなものは既にあったのだなと感じた。

今の十代に信じてもらえるかは分からないが、1998-2004年ごろまでエロゲはオタクの教養であり、表現のトップを走っていた。当時は不景気で純度の高い文学青年崩れでさえ、自分の表現ができるということでエロゲライターを目指す奴がいた時代だ。ちょうどその頃(2006-2010年)に自分も大学の文学部に籍を置いていたので確かに間近にそういう奴がいた。割と真面目に文学をやっている奴のほうが程度の大小はあれエロゲやラノベを嗜んでいた。(無論例外はある)

2005年辺りになるとそれらのライター、イラストレータ含め、ライトノベルや、商業の世界に進出(もしくはヘッドハント)し、今でも名が通っている人が多い。それだけ能力のある人間がエロゲ界隈に溢れていた証拠だろう。

あの頃は、今より何倍も窮屈で、俺達のようなオタクは思いつめていることしか出来なかった。故に泣きゲーのような鬱屈とした表現とわずかの『救い』みたいな表現に熱狂できたし、自分の内面というものに向き合ったからこそ、それをアウトプットに活かせた時代だったのかもしれない。

あれから十年が過ぎ、自分たちの世界は少しずつ変化している。ささやかな変化なので、あまり変わってないように思えるけれど着実に変わっている。自分もその分だけ年を取った。

こういうのはある一定のところで振り返らないとわからないものだ。連続した時間軸より、切り取った時間軸のほうが変化に素早く気づける、というより世界は気づかないうちに変わってしまうものなのだ。だからこそ振り返らないといけないのだ、新しい時代のために。

いつの間にかオタク界隈はクリーンで明るい日向の過ごしやすい世界になってしまった。昔のようなエッジの効いたアンダーグラウンドの世界には戻れないだろう。それでも、一つだけ言えるとしたら、あの鬱屈とした青春時代のような空気に比べれは、俺等は上手く生きることができている。